九州工業大学 情報工学部 機械情報工学科 助教授
整合圧力ポアソン方程式に基づく一体型解法によるシェル-流体連成問題の効率的な並列解析 | |
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構造と流体の相互依存性の強い問題に対しても,構造と流体の方程式を一体にした連成方程式を解く一体型解法は解析の安定性に優れている. しかし,(a) 構造と流体の部分係数行列の成分値が大きく異なるため,連成方程式の係数行列の条件数が悪化すること, (b) シェル構造の場合,構造の部分係数行列そのものの条件数が悪化すること, により大規模解析に必須の反復法ソルバの適用が困難な場合がある. 整合圧力ポアソン方程式に基づく一体型解法は元の連成方程式と等価な整合圧力ポアソン方程式を導くことで,その問題を回避している. 本解法をシェル構造の弾性翼が広い流体中で羽ばたく問題の解析に適用した.解析の基本的設定をFigure2-1,2-2に示す. 本問題はシェル構造の大変形と流体領域の大変動を含み,構造と流体の相互依存性が比較的強いと考えられる. 8領域分割の流体メッシュ(節点数272205,要素数1574496)をFigure2-3に示す.この場合,流体と構造の連成方程式は100万自由度強となる. 本解析の速度向上率をFigure2-4に示す.この結果から,本解法がシェル-流体連成問題の並列解析を効率的に行うことができることがわかる. | |
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Figure 2-1 | Figure 2-2 |
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Figure 2-3 | Figure 2-4 |
昆虫飛行の流体構造連成モデリング(受動的な迎角と揚力の発生の2次元数値解析による検討) | |
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翼のスパン方向長,翼弦平均長,ストローク角の時刻歴,周囲流体(ミネラルオイル)の物性をDickinsonらのdynamically scaled model (Science, 1999)と一致させている.
Dickinsonらの実験との本質的な違いは,本解析では翼の迎角が流体構造連成効果により自動的に発生している点である.
Figure 3-1に示されるように,並進過程で一定の迎角を保持し,ストロークの端点で回転している.
一方,流体の無い場合,Figure 3-2に示されるように,ストロークの端点で翼の慣性力により回転できるものの,並進過程で迎角を保持できず,
弾性翼の固有振動数に基づく振動を示した.Figure 3-3に迎角のDickiosonらの実験の設定と本流体構造連成解析結果の時刻歴を示す.
本解析の場合,翼弦を含む2次元平面内の解析のため,前縁渦の安定に必要なスパン方向の軸流を捕捉できないが,Dickinsonらの実験結果 (Science, 1999) のうち,失速遅れに
よる揚力を除いた揚力(揚力の回転成分)と本解析による揚力を比較したところ,良い一致を示した (Figure 3-4).
流体構造連成解析には整合圧力ポアソン方程式に基づく一体型解法(2の[4][6])を用いている. |
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(a) downstroke (b) upstroke |
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Figure 3-1 fluid-structure interaction effect is considered. |
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(a) downstroke (b) upstroke |
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Figure 3-2 fluid is not considered. |
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Figure 3-3 Comparison of time histories of attack angle. Red line indicates present result, black line indicates advanced case in Dickinson's experiment, and gray line indicates symmetrical case in Dickinson's experiment. | Figure 3-4 Comparison of time histories of lift force. Red line indicates present result in Re=171 case, blue line indicates present result in Re=136 case, black line indicates rotational component of Dickinson's lift, and gray line indicates total Dickinson's lift. |
昆虫飛行の流体構造連成モデリング(受動的な迎角と揚力の発生の3次元数値解析による検討) | |
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翼のスパン方向長,翼弦平均長,ストローク角の時刻歴,周囲流体(ミネラルオイル)の物性をDickinsonらのdynamically scaled model (Science, 1999)と一致させている. Dickinsonらの実験との本質的な違いは,本解析では翼の迎角が流体構造連成効果により自動的に発生している点である. Figure 3-5に示されるように,並進過程で一定の迎角を保持し,ストロークの端点で回転している. Figure 3-6にupstrokeの中間時点での前縁付近の流線を示す.翼の付け根から先端に向かってらせん状の軸流が発生している.軸流は付け根から約70%の付近で崩壊している. 流体構造連成解析には整合圧力ポアソン方程式に基づく一体型解法(2の[4][6][7])を用いている. | |
Figure 3-5 | Figure 3-6 |